中国唐代の医学書「備急千金要方」に記された「上医・中医・下医」という言葉は、現代医療にも通じる奥深い概念を含んでいます。
「上医は未病の病を医す」
これは、まだ発症していない病気の兆候を察知し、未然に防ぐことを意味します。
現代医学では、「未病」は病気と健康の中間状態を指します。自覚症状はないものの、検査数値に異常が見られるなど、将来的に病気になるリスクが高い状態です。
上医は、患者の生活習慣、食生活、精神状態などを総合的に把握し、未病の状態を見抜きます。そして、適切なアドバイスや治療を行い、病気の進行を食い止めます。
「中医は欲病の病を医す」
これは、病気が発症し始めた段階で、適切な治療を行うことを意味します。
現代医学では、「欲病」は病気が発症し始めたものの、まだ症状が軽微な状態を指します。
中医は、患者の症状を丁寧に観察し、病気の原因を特定します。そして、漢方薬や鍼灸などの東洋医学的な治療法を用いて、病気の進行を抑えます。
「下医は已病の病を医す」
これは、病気が進行し、症状が顕著に現れてから治療を行うことを意味します。
現代医学では、「已病」は病気が進行し、症状が明確に現れた状態を指します。
下医は、西洋医学的な検査や治療法を用いて、病気の治療を行います。
「上医」が最も重要とされるのは、病気を未然に防ぐことで、患者の苦痛を軽減し、医療費を抑制できるからです。
現代医療では、予防医療の重要性がますます高まっています。生活習慣病の予防や、がんの早期発見・早期治療などがその代表例です。
上医は、予防医療の担い手として、患者の健康寿命を延ばすために重要な役割を果たします。
千金要方の「上医・中医・下医」という概念は、現代医療においても非常に重要な教えです。
病気を未然に防ぐ、あるいは早期に発見し、適切な治療を行うことの重要性は、現代医学においても変わりません。
患者の生活習慣や精神状態などを総合的に把握し、患者一人ひとりに合った医療を提供することの重要性も、千金要方の教えに通じるものです。
「千金要方」に記された「上医・中医・下医」という言葉は、単なる医学的な分類にとどまらず、医療の本質を教えてくれます。
上医は、未病を治すことで、患者の健康寿命を延ばし、医療費を抑制することができます。
中医・下医も、患者の症状や状態に合わせて適切な治療を行うことで、患者の苦痛を軽減することができます。
千金要方の教えは、現代医療においても十分に通用する、普遍的な価値を持っています。
2025/02/12