ドケルバン病(ド・ケルバン腱鞘炎)は、手首の親指側に位置する腱と腱鞘が炎症を起こし、痛みや腫れを引き起こす疾患です。特に手首を動かす際や親指を使う動作で症状が悪化し、日常生活に支障をきたすことがあります。
原因と症状
この疾患は、親指を伸ばす短母指伸筋腱と外転させる長母指外転筋腱が通る腱鞘の炎症によって生じます。反復的な手首や親指の動作、特に手作業や育児などでの過度な使用が主な原因とされています。症状としては、手首の親指側の痛みや腫れ、親指や手首の動作時の不快感が挙げられます。
診断
診断は主に臨床的に行われ、フィンケルシュタインテストが一般的です。これは、親指を握り込んだ状態で手首を小指側に曲げることで痛みが誘発されるかを確認する方法です。
治療法
ドケルバン病の治療には、保存的療法と手術的療法があります。保存的療法としては、以下の方法が検討されています。
コルチコステロイド注射:炎症を抑えるために腱鞘内にステロイドを注射する方法です。あるランダム化比較試験では、ステロイド注射がサムスピカスプリント(親指を固定する装具)よりも有効であることが示されていますが、参加者が妊娠中または授乳中の女性のみであったため、一般化には注意が必要です。
サムスピカスプリント(親指の固定):親指と手首を固定することで、腱の安静を図る方法です。しかし、ステロイド注射と比較すると効果が劣る可能性があります。
超音波療法:超音波を用いて炎症を軽減する方法です。サムスピカスプリントと併用することで、単独使用よりも効果的であることが示されています。
多血小板血漿(PRP)注射:自己血液から作成したPRPを患部に注入し、組織の再生を促す方法です。一部の研究では、PRP注射が保存的治療よりも痛みの軽減や機能改善に有効であることが示唆されています。
これらの治療法の選択は、患者の症状の程度や生活状況に応じて医師と相談の上で決定されます。保存的療法で効果が見られない場合、手術的療法が検討されることもあります。
まとめ
ドケルバン病は、手首の親指側の腱と腱鞘の炎症による痛みや腫れを特徴とする疾患です。診断は主に臨床的に行われ、治療法としてはコルチコステロイド注射、サムスピカスプリント、超音波療法、PRP注射などが検討されています。各治療法の効果については、個々の患者の状況や最新の研究結果を踏まえて、医師と相談の上で最適な方法を選択することが重要です。
2025/03/23