運動器不安定症(Musculoskeletal Ambulation Disability Symptom Complex: MADS)は、高齢者において運動器の機能低下により、バランス能力や歩行能力が低下し、転倒や閉じこもりのリスクが高まる状態を指します。
日本整形外科学会などの3学会は、運動器不安定症を以下のように定義しています。
定義: 高齢化に伴い運動機能が低下する運動器疾患により、バランス能力および移動歩行能力が低下し、閉じこもりや転倒リスクが高まった状態。
診断基準: 以下の11の運動器疾患または状態の既往がある、または罹患している者で、日常生活自立度および運動機能が以下の基準に該当する者。
日常生活自立度: ランクJ(生活自立:独力で外出できる)またはランクA(準寝たきり:介助なしには外出できない)に相当。
運動機能: 以下のいずれかに該当。
開眼片脚起立時間が15秒未満。
3m Timed Up and Go(TUG)テストで11秒以上を要する。
高齢化に伴い運動機能低下をきたす11の運動器疾患または状態:
脊椎圧迫骨折および各種脊柱変形(亀背、高度腰椎後弯・側弯など)
下肢骨折(大腿骨頚部骨折など)
骨粗鬆症
変形性関節症(股関節、膝関節など)腰部脊柱管狭窄症
脊髄障害(頚部脊髄症、脊髄損傷など)神経・筋疾患
関節リウマチおよび各種関節炎下肢切断後
長期臥床後の運動器廃用
高頻度転倒者
これらの基準は、運動器不安定症の診断を明確にし、適切な介入を行うために設定されています。
高齢者における運動機能の低下は、転倒や骨折のリスクを高め、最終的には要介護状態や寝たきりの原因となる可能性があります。 そのため、早期の診断と適切な対策が重要です。
福岡那珂川研究では、地域在住の高齢者を対象に、運動器不安定症の運動機能評価基準に該当する者の身体機能および認知機能の特性が調査されました。その結果、運動器不安定症の基準に該当する高齢者は、筋力や歩行速度などの身体機能が低下しており、認知機能の低下も認められました。特に、年齢や性別によって、これらの関連性が異なることが示唆されています。
運動器不安定症の予防には、日常的な運動習慣の維持が効果的です。散歩や軽い体操などの継続的な運動は、筋力やバランス能力の向上に寄与し、転倒リスクの低減につながります。また、医療機関でのリハビリテーションを通じて、専門的な指導を受けることも有益です。
運動器不安定症は、高齢者の生活の質や健康寿命に大きく影響を与える重要な疾患概念です。早期の発見と適切な介入により、転倒や閉じこもりのリスクを軽減し、健康的な生活を維持することが可能となります。日常生活での運動習慣の維持や、定期的な健康チェックを心がけることが、予防の鍵となります。
2025/03/24