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あごの違和感が首や肩こりに関係している理由

「口を開けるとカクッと音がする」「あごが重だるい」「首や肩こりがなかなか取れない」――このような経験はありませんか?
実は、一見すると無関係に思えるあご(顎関節)と首・肩は、解剖学的にも機能的にも深くつながっています。

本記事では、最新の研究や論文をもとに「あごの違和感と首・肩こりの関係」をわかりやすく解説します。


あごと首・肩はどうつながっているのか?

1. 顎関節と首の解剖学的つながり

あごを動かす「咀嚼筋(そしゃくきん)」は、頭蓋骨や首の筋肉と密接に連携しています。特に、**側頭筋や咬筋(こうきん)、内外側翼突筋(よくとっきん)**は、首の筋肉群と筋膜を通じて連動します。

論文(Okeson JP. Management of Temporomandibular Disorders and Occlusion, 2019)でも、顎関節症と頸部痛が高い関連性を持つことが報告されています。

2. 姿勢の影響

スマートフォンやPC作業で多い「頭が前に出る姿勢(フォワードヘッド)」は、首から顎にかけてのバランスを崩します。
この姿勢では、顎関節に余計な負担がかかるため、違和感や痛みが出やすいとされています。

3. 神経的なつながり

顎関節周囲を支配するのは三叉神経ですが、この神経は首や肩の筋肉を支配する神経と脳幹レベルで交わります。
そのため、顎関節の不具合が首・肩の感覚に影響を及ぼすことがあるのです(Sessle BJ, Pain, 2000)。


よくある症状の組み合わせ

  • あごを開け閉めするとカクカク音がする

  • 朝起きるとあごが重い(歯ぎしり・食いしばりの可能性)

  • 首や肩が常にこっている

  • 偏頭痛やこめかみの痛みがある

  • 片方の肩ばかりが張る

これらがセットで起こる場合、あごと首・肩の連動が乱れているサインかもしれません。


論文から見る「あごと肩こりの関係」

  1. 顎関節症患者の約70%が頸部のこりや痛みを訴える
    (Leeuw R et al., Orofacial Pain, 2020)

  2. 不良姿勢は顎関節に負担をかけ、肩こりや頭痛を悪化させる
    (Armijo-Olivo S et al., J Oral Rehabil, 2011)

  3. 歯ぎしりや食いしばりと首の筋肉活動には相関がある
    (Manfredini D et al., J Oral Rehabil, 2013)


セルフチェックリスト

次の項目で「3つ以上あてはまる」場合、あごと首・肩の連動を見直すとよいかもしれません。

  • □ あごを開け閉めすると音がする

  • □ 首や肩のこりが慢性的にある

  • □ 頭が前に出る姿勢でスマホやPCを長時間使う

  • □ 朝起きると奥歯に違和感やだるさがある

  • □ 偏頭痛やこめかみの痛みが出る

  • □ よく片側の肩だけこる


セルフケアのヒント(一般的な対策)

※以下は一般的な情報であり、治療行為ではありません。症状が強い場合は必ず専門の医療機関へご相談ください。

1. 姿勢を整える

  • デスクワーク中は背筋を伸ばす

  • モニターの高さを目線に合わせる

  • 枕の高さを見直す

2. あご周りのリラックス

  • 「イー」と発音して口周りをストレッチ

  • 食いしばりをしていないか日中意識する

3. 首・肩のストレッチ

  • ゆっくり首を左右に倒す

  • 肩を大きく回して血流を促す


まとめ

  • あごの違和感と首・肩こりは、筋肉・神経・姿勢を通じて密接に関係している

  • 顎関節症の患者の多くが首や肩のこりを同時に抱えている

  • 日常の姿勢改善やセルフケアで予防できることも多い

「ただの肩こり」や「あごのちょっとした違和感」と見過ごすのではなく、体全体のつながりを意識してケアすることが大切です。

2025/09/04