「しっかり8時間寝たはずなのに、体が重い」 「朝起きた瞬間から、すでに疲れている」
そんな悩みを抱えている方は少なくありません。実は、睡眠時間という「量」を確保していても、体が**「休息を受け入れられる状態」**になっていなければ、疲れは蓄積する一方です。
睡眠の質を下げ、疲れが取れない体になってしまっている人には、医学的・解剖学的に共通するいくつかの「体の特徴」があります。本記事では、その正体を科学的な根拠に基づいて解説します。
疲れが取れない人の多くに見られるのが、呼吸の浅さです。
呼吸を司る主要な筋肉である「横隔膜(おうかくまく)」は、自律神経と深く関わっています。ストレスや長時間のデスクワークで姿勢が崩れると、横隔膜の動きが悪くなり、呼吸が浅くなります。
呼吸が浅いと、睡眠中も交感神経(興奮モード)が優位なままになり、脳や内臓が十分に休まりません。また、血中の酸素濃度が低下し、細胞の修復(リカバリー)が遅れることも、翌朝の「だるさ」に直結します。
解剖学的な特徴として目立つのが、両肩が内側に入り込んだ**「巻き肩」**です。
大胸筋などの前側の筋肉が硬く短縮すると、胸郭(肺を囲むカゴのような骨格)の柔軟性が失われます。
睡眠中の圧迫: 胸郭が広がらないため、寝ている間も呼吸のたびに余計な筋力を使うことになります。
心拍への影響: 物理的な圧迫が心肺機能の効率を下げ、眠りの質を低下させます。
意外かもしれませんが、**「顎(あご)の筋肉」**の硬さは全身の疲れに影響します。
寝ている間に無意識に歯を食いしばっている人は、一晩中「筋トレ」をしているような状態です。 咬筋(こうきん)が緊張すると、頭蓋骨を通じて脳に「今は活動中である」という誤った信号が送られ続け、睡眠の段階が深く沈み込みません。朝起きたときに顎が疲れている、あるいは頭痛がする人は、このケースに該当する可能性が高いです。
生物学的特徴として、深部体温(体の内部の温度)の調整機能が低下していることが挙げられます。
通常、人は深部体温が急激に下がるタイミングで強い眠気を感じ、深い眠りに入ります。しかし、慢性疲労の人は手足の血流が悪く(冷え性など)、体内の熱を外に逃がす「放熱」がうまくいきません。その結果、眠りが浅くなり、成長ホルモンの分泌が阻害されて疲れが残ります。
入浴習慣の見直し: 寝る90分前に40度程度の入浴をすることで、意図的に深部体温を上げ、その後の急降下を利用して深い眠りを誘います。
「胸を開く」ストレッチ: 就寝前に仰向けで両腕を広げ、胸の筋肉を伸ばすだけで、呼吸の通り道が確保されます。
寝ても疲れが取れない人に共通する特徴は、**「浅い呼吸」「巻き肩による胸郭の硬直」「顎の食いしばり」「体温調節機能の低下」**です。これらはすべて、自律神経の乱れと物理的な筋緊張が相互に影響し合った結果であり、単なる「睡眠不足」ではなく「睡眠の質の構造的な欠如」を招いています。
横隔膜と自律神経: 横隔膜には自律神経が密集しており、その可動域が副交感神経の活性化に寄与することが生理学的に証明されています。
深部体温と睡眠: スタンフォード大学の西野精治教授らの研究により、皮膚温度と深部体温の差が縮まる(放熱される)ことが入眠の鍵であることが示されています。
咬筋の緊張: 睡眠時ブラキシズム(歯ぎしり・食いしばり)が微小覚醒を誘発し、睡眠構造を断片化させることが睡眠医学において指摘されています。
疾患の可能性: 激しいいびきや無呼吸がある場合は「睡眠時無呼吸症候群」、どれだけ寝ても耐え難い眠気がある場合は「ナルコレプシー」などの疾患が隠れている可能性があります。
精神的要因: うつ病や適応障害などの初期症状として「熟眠障害」が現れることもあります。これらはセルフケアのみで解決せず、専門家に確認が必要です。
西野精治 (2017) 『スタンフォード式 最高の睡眠』 サンマーク出版
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology (自律神経と呼吸の相関に関する記述)
American Academy of Sleep Medicine (AASM) - Sleep-related bruxism guidelines
次の一歩として: まずは、今夜寝る前に「自分の指が肋骨の下(みぞおちあたり)にスッと入るか」を確認してみてください。指が入らないほど硬い方は、横隔膜が凝り固まっている証拠です。深呼吸の練習から始めてみませんか?
2026/01/29