「なぜかいつも右側だけ肩が重い」「左側の肩甲骨周りだけが痛む」 このように、肩こりが左右どちらか一方に偏って現れる症状に悩む人は少なくありません。両肩が均等に凝る場合とは異なり、片側だけの肩こりには、日常生活の癖や身体の構造的な歪みが色濃く反映されています。
本記事では、片側だけの肩こりが起こる科学的なメカニズムと、注意すべきサインについて専門的知見に基づいて解説します。
人間の体は左右対称に見えて、実は利き手や臓器の配置などにより、非対称な負荷がかかりやすい構造をしています。
利き手でマウスを操作したり、文字を書いたりする際、その側の肩甲骨はわずかに外側へ広がり、固定されます。このとき、肩を持ち上げる「僧帽筋(そうぼうきん)」や「肩甲挙筋(けんこうきょきん)」が持続的に収縮し、片側だけの筋疲労を招きます。また、利き目ばかりを使っていると、無意識に首を傾ける癖がつき、片側の筋肉に負担が集中します。
土台である骨盤が傾くと、背骨はバランスを取るためにS字状にカーブします。これを「構築的・機能的側弯」と呼びます。
背骨が傾けば、その上にある肩の高さも左右で変わります。低い方の肩は、腕の重さを支えるためにより強い力で筋肉を緊張させなければならず、結果として片側だけの慢性的なコリが生じます。
意外な原因として「片噛み(かみくせ)」があります。片方の奥歯ばかりで噛む癖があると、顎の筋肉(咬筋)から首の筋肉(胸鎖乳突筋)へと緊張が連鎖し、その側の肩こりを誘発することが医学的に指摘されています。
以下の習慣に心当たりはありませんか?これらはすべて片側肩こりの直接的な原因となります。
バッグをいつも同じ側の肩にかける
足を組んで座る(骨盤が傾く原因)
スマホを見る時に、いつも決まった側へ首を傾けている
横向き寝で、常に同じ側を下にして寝ている
片側だけの痛みや違和感には、内臓からのSOS信号(関連痛)が隠れている場合があります。
左側の肩・腕: 心臓疾患(狭心症や心筋梗塞)の予兆として、左肩に放散痛が出ることがあります。「締め付けられるような痛み」を伴う場合は、早急な受診が必要です。
右側の肩・背中: 肝臓や胆嚢(胆石など)の問題が、右肩の重だるさとして現れることがあります。
これらは、内臓の神経と肩の皮膚の神経が、脊髄の同じ高さで脳に情報を送っているために起こる錯覚のような現象です。
意識的に利き手ではない方の手を使う、あるいはバッグをかける肩を交互に変えるだけでも、特定の筋肉への持続的な負荷を軽減できます。
壁の前に立ち、片手を壁につく。
ゆっくりと体を反対側にひねり、胸の筋肉(大胸筋)を伸ばす。
左右で行い、特に「硬い」と感じる側を念入りに行う。
片側だけの肩こりは、**「利き手・利き目による持続的な筋収縮」や「骨盤の傾きに伴う脊柱の歪み(代償動作)」**が主な原因です。筋肉の左右バランスが崩れることで、片側の血流が極端に悪化し、痛みが慢性化します。ただし、安静時にも痛む場合や、内臓の不調を伴う場合は、内臓疾患に由来する「関連痛」の可能性があるため軽視は禁物です。
バイオメカニクス: 頭部や肩の非対称な位置が、僧帽筋上部線維の筋電図活動を片側性に上昇させることが多くの研究で示されています。
関連痛のメカニズム: 内臓感覚と体性感覚が脊髄の後角で収束する(収束-投射説)ことは、生理学的な定説です。
咬合と肩こり: 下顎の偏位が頸部筋群の緊張に影響を与えることは、歯科・整形外科の境界領域で広く研究されています。
本記事は一般的な解説であり、自己診断を推奨するものではありません。
専門家に確認が: 激しい痛み、しびれ、めまい、冷や汗を伴う肩こりの場合は、心血管疾患や頸椎疾患の可能性があるため、直ちに整形外科や循環器内科を受診してください。
日本整形外科学会「肩こり」診療ガイドラインおよび解説
Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology (関連痛に関する記述)
Katsura, et al. (2014). Relationship between head posture and muscle activities of the neck and shoulder.
次の一歩として: 鏡の前に立ち、目をつぶって「真っ直ぐ」だと思う姿勢で立ってみてください。目を開けたとき、左右の肩の高さに差がありませんか?もし数センチの差があるなら、それがあなたの片側肩こりの根本原因かもしれません。一度、専門の整体師や理学療法士に姿勢評価を依頼してみてはいかがでしょうか。
2026/02/12